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クラシックについて語りたい【第四回】

「クラシック」について語るときに、絶対にはずせないのが歴史の話だと思います。4大ラガーの歴史などを書きつづると大変な文量になってしまうので、ドルトムンダー中心の話にします。

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≪そもそも1900年台の輸出ビールって?≫

4大ラガービール、ウィーン、ボヘミア、ババリア、ドルトムントとあるが、この中で輸出が盛んだったのは、ウィーンラガー(赤褐色のモルトを使用)、ババリア(ミュンヘンエクスポート、とも呼ばれ、だいぶ甘め)、そしてドルトムンダーの3つ。

中でもドルトムンダーは、ホップが結構多めに使用しているわりに、麦芽の使用量も多く、他のババリア、ウィーンに比べて味わい的に多くの人に好まれたらしい。

当然ながら、ドルトムントは石炭と炭鉱の街。労働者階級からも絶大な人気で地元で飲まれ、ドルトムント以外の土地でも人気となっていったのである。

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≪線路が先か、醸造所が先か≫

1901年のドルトムントの地図を見ると、線路沿いに醸造所が立ち並んでいてドルトムントの中央駅付近だけでも8か所もある。

どちらが先か、というと鉄道が先で石炭、鉄鋼を運んでいたところに醸造所が立ち始めていった、というの有力(というか間違いない)。

ドルトムントでは、1900年前後に設立された醸造所が多いようだが、それ以前からの歴史のある醸造所(南ドイツのフランケン地方のような300年以上の歴史があるようなところ)は、私が知る限りは無いように思う。

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≪ドルトムダーという呼び名について(ツカサが知っておいたほうがいいと思う事)≫

何度か書いてきたが、かつて輸出が盛んだったドルトムントのビールは、「エキスポート」または「ドルトムンダー」と呼ばれ、ラガースタイルのビール。

どちらで呼んでも間違いはないビールだが、ドルトムンダーと呼ぶときには注意が必要になる。

というのも、「ドルトムンダー」という言葉には、2つの意味があり、

1)ドルトムントの人、もの

2)ドルトムントのビール

がある。

私は、酒類業界でプロとして仕事をしているので、業界内での言葉としては、2)として話をしているが、しかし社会一般的には、1)のほうが多く使用されていることだろう。

そういったことを踏まえたうえで、ビールのスタイルを語る際には少し気を配る必要があるのである。

たとえば、

「ラガービールのカテゴリにはエキスポートがあります。」というのは

問題ないが、

「ピルスナーのカテゴリにはドルトムンダーがあります。」

というのは絶対に言ってはいけない。(チェコのピルゼン地方に、ドイツのドルトムント市民は属している、ということになるので、国際問題になりかねない。)

最近は、インターネット上の翻訳の性能が高くなっているので、たとえ日本語の記事であっても間違いの無いように注意が必要である。

ベアレンクラシックを飲むときに、覚えておくと、チョットした話題になっるかもしれない。

クラシックについて語りたい【第三回】

「クラシックの液体についての話をしたい。」

そう聞くと、苦味とか色の話か?と想像されると思う。

その通りなのだが・・・。

(前回からの続き)

ベアレンクラシックはIBU23、という苦味値にも関わらず、それ程苦くはない。

その大きな原因は、麦芽を必要以上に多く使用している、からである。

「必要以上」という表現は大げさかもしれないが、今の時代においては「必要以上」であることに変わりはない。

ここで、そもそもベアレンクラシックの原型となっている「ドルトムンダー」というビールのスタイルに少し触れたい。

「ドルトムンダー」というビールのスタイルは別名「エクスポート」とも呼ばれ、かつてドイツの都市ドルトムントで造られていたビールのことを指す。エクスポートとばれるだけあり、エキス分が高く、長期輸送にも耐えられるラガービールで、当時は炭鉱で働く人たちに広く愛されていたビールである。

流通が革命的に進化を遂げた現在において、わざわざエキス分が高くなくても長期輸送も充分に可能なわけだが、ベアレン醸造所では、(少々ロマンチックな言い方をすれば)1900年頃のレシピを100年前から引き継がれている醸造設備で再現している。

つまり、「必要以上」に麦芽を贅沢に使用しているのである。そのためホップの量が少し多めだが苦くなく、むしろ麦芽の深いコクと甘みを感じるのである。

ここで注目したいのは、「麦芽100%」という日本の酒税法上のマジックである。同じ「麦芽100%」でも麦芽の使用量は誰も分からない。麦芽の「使用比率」は麦芽の「使用量」ではないので、酒税法上、同じ表示の「麦芽100%」であっても違いは飲んでみないと分からい。

たどり着くのは、

「知ってもらうには飲んでもらうしか無い」

という真理。

そこで、IBUの話に戻るのだが、苦味の感じ方は麦芽の甘み、香り、ホップのニュアンス(アロマホップなのか、など)でだいぶ左右される。

ベアレンのクラシックに当てはめて紹介するには、IBUの情報や「麦芽100%」といった画一的な表現だけだと魅力を伝えきれない、ということになる。

乱暴な言い方をするなら、飲んでもらえば、あえて私が稚拙な表現で力説する必要はない、という事になる。理想としては、、、飲みながら歴史や文化、造り手の想いを少しでも思い浮かべてもらえると嬉しい限りである。

つづく…

クラシックについて語りたい【第二回】

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新年明けましておめでとうございます。
今年もツカサのコラム(仮)をよろしくお願いいたします。
不定期でしたが、毎週木曜日更新を予定して執筆します。
本年もよろしくお願いいたします。
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「クラシックの液体についての話をしたい。」

そう聞くと、苦味とか色の話か?と想像されると思う。

その通りなのだが・・・。

突然だが、IBUというのをご存知だろうか。

ビール業界において、IBUとは国際的な苦味の単位を表しており、International Bitterness Unitsを略したものである。つまり国際苦味単位なのだが、最近のクラフトビールブームにより、このIBUを表記する飲食店が増えてきた。

(無論、そういった会社、飲食店、お客様を批判するつもりは無いが)ベアレン醸造所では聞かれない限り、あまりIBUについて語ることは無い。IBU表現に対して消極的な姿勢ともいえる。

企業秘密なのか?と問われれば、そういうことでもないのでお答えするのだが、なぜ消極的なのか?という事について語りたい。

たとえば、ベアレンクラシックのIBUは23。

IBUという単位は、苦味の基になっているホップの質量、アルファ酸、麦汁の体積などで算出されるわけだが、大手のラガービールのIBUが15、16程度、と言われているので、クラシックは「苦い」部類になる。

これは一つの指標になるわけだが、人間の味覚を数値化しているものではない、ということが重要になってくる。

つまり、「苦味の基を使っている量」を数値化しているわけで、感じる味覚とイコールでは無いということになる。

このIBU23の「苦い」部類に入るベアレンクラシックは、――飲んだことのある方ならご存知だと思うが――苦くない。少なくとも、大手4社のラガービールより、甘さすら感じるではないだろうか。

ここで特筆しておきたいのは、麦芽の使用量になる。

この話の続きは次回に。

(続く)