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ライ麦ビールについて

ライ麦を原材料にして作られるビールは、最近では増えてきている。
しかし、伝統的なスタイルのライ麦ビール(ドイツ語:ROGGENBIER)を製造している醸造所は、未だに少ない。

伝統的なライ麦ビールについて少し説明をすると、ヴァイツェン酵母を使用しているのが特徴となり、上面発酵で造られる。これは、ドイツに未だに存在している「ビール純粋令」に記載があったためである。そのため、伝統的なライ麦ビールの味わいは、ライ麦特有の芳醇な香り、心地よい酸味、そして香りの奥底から湧き上がってくる、熟したバナナや桃のようなフルーティな香りが特徴である。

そして、とろりとした口当たり、口の中をなめらかに滑り落ちるような圧倒的なスムーズさを併せ持っている。
この特徴を成すのが、やはりライ麦麦芽であり、原材料の特性から「近代醸造において再現し難い伝統的なビールの1つ」と言われる所以である。

ライ麦の成分特性の一つにΒグルカンがある。
この成分はビールの製造の、糖化工程(仕込釜で麦芽をゆっくりと煮込む)において、粘度を増していきドロドロの状態になる。そのため、糖化工程の後に麦汁を取り出すために濾過をするときに、目詰まりをして濾過が困難になるのである。
そのため、最近では、「ライ麦」量を減らし、IPAやラガースタイルにアレンジを加えているところが多く、ベアレン醸造所のように伝統的なレシピを変更すること無く造るところは少ない。

宮木マイスターは言う。
「これは、ハッキリ行って機材のよるところが大きいですよ。近代醸造において、醸造機器が効率を求めた構造になっていますからね。古いレシピのライ麦ビールを再現するのは難しいでしょう。ウチ(ベアレン醸造所)の場合、効率悪いけど、こういう伝統的なスタイルのビールには良く対応できますよ。大変だけどね。」
それ故に、他社の追随を寄せ付けない、唯一無二のアイテムなのかもしれない。
また、私個人の感想だが、瓶詰めと樽生の違いを感じやすいと思う。

通常、パストライズ(加熱処理)したビールと、生詰めのビールは、数日置くと人の嗅覚ではほとんどわからない状態になるが、ライ麦ビールは、樽生のほうがフレッシュな感じを受ける。月並みな表現だが「活き活き感」が違う気がする。
ぜひ、樽生ビールでも味わってもらいたいビールである。

岩手の「岩手ゆずヴィット」について(その1)


ベアレン醸造所が作るビールにおいて、地域名が入ることは稀である。地元密着のクラフトビールとして、多少なりとも注目して頂いているにもかかわらず、である。

これは、私達の「地ビール」の定義を考えたときに「地元の原材料を使用している=地ビール」という単純なものではないからである。(この話は別の機会に触れたいと思う)

それでも敢えて「岩手」と表現している「岩手ゆずヴィット」には何があるのか?

理由の一つは、やはり使用している「北限のゆず」だろう。ベルギースタイルのホワイトビール「ヴィット」の原材料にはオレンジピールが使用されるが、岩手ゆずヴィットには「北限のゆず」の果皮が使用される。「北限のゆず」とは、柚子が生息する北限として、岩手県三陸の陸前高田で栽培しているブランド果実。2011年に甚大な被害をうけたこの地域が復興の象徴としてブランド化をすすめている。実は、ベアレン醸造所は「北限のゆず研究会」サポーターとして関わっている。柚子の果汁は、多くの商品化に利用されるが、果皮の商品化は難しく、「ウチならオリジナリティのある商品開発に使えるのではないか」となった。

ちなみに、この「北限のゆず」の果汁絞りなどの仕事を地元の障害者就労継続支援事業所が請け負っている。つまり「北限のゆず」を使用した商品が世に出回ると、彼らの仕事も増えることになる。陸前高田の復興に一役買うことになるである。

ベアレンの「岩手ゆずヴィット」は1本の売上につき10円を「北限のゆず研究会」寄付することにしている。