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オンリーファーストウォートについて(後篇)

一番麦汁のみを使用し、麦汁のうまみも活かしつつ、ホップのニュアンスを引き出すビールとして仕込んでいる、「オンリーファーストウォート」

実は、今年使用しているホップは「IBUKI」という国産ホップである。

このIBUKIだが、岩手県遠野市で作られるホップで、国内では最大級のホップ産地で安定的に育てられているホップと言える。某大手メーカーが契約栽培していたホップだが、今年から一般販売を開始。地元のホップを使用できる、ということで今回のビールに使うことにした。

やはり、地元岩手で育てられているホップを使えるようになる、というのは感慨深いものがある。

製造チームではこのホップの特徴を活かすために、アロマホップとしてふんだんに使用。(香りづけに使っているという意味)

ちなみに、ビタリング(苦味づけ)のホップは、ドイツのハラタウ地方で2016年5月に新しくリリースされた新品種を使っている。ドイツのホップ生産の約8割を占めるハラタウ地方だが、クラフトビール市場のニーズに合わせた品種を育てはじめている。

そういった視点で見ると、変わらない味わいを伝え続ける「ベアレンクラシック」に対して、変化していくホップの特徴を活かす「オンリーファーストウォート」とも言えるかもしれない。

繊細で違いが分かり難く「ラガービールでしょ?」と十把一絡げにされがちだが、飲み比べるとその特徴ははっきりと感じられる。そんなラガービールの魅力も、このオンリーファーストウォートから感じ取ってもらえると嬉しく思う。

オンリーファーストウォートについて(前篇)

ファーストウォート、と聞いても全く見当がつかないと思う。そもそもビール醸造に関わらない限り、触れることのないワードだが、直訳すると「一番麦汁」ということになる。

この話になると、「では二番麦汁は?」という話になるので、この話も含めて書き綴りたい。

麦汁を摂る場合、醸造工程では煮沸(といっても沸騰温度はまでは上昇させないよ)がある。

要するに、麦汁を煮込んで汁を摂るわけだが、—ザックリ表現すると—煮込んだ汁をザル※で濾して汁を摂る。

1回目濾されて出てくるのが一番麦汁。

※現場で使用するのは濾過釜です。

ここでは、結構濃い麦汁が摂れるわけだが、それでもまだザルに残った麦芽には成分がたっぷり含まれた麦汁が残っている。これを余すことなく摂るためにお湯をかけて、濾しだす。これが二番麦汁。

始めに断りたいのは、一番が偉くて、二番はダメ、というわけではない。

二番麦汁には、タンニン分など含まれており、味わいに複雑さを加えてくれる。(当然、いっぱいお湯をかけると薄くなるので、それでは全体が薄くなるので加減が大切)

基本的に、ベアレンでは伝統的なレシピを尊重して作るので一番麦汁も二番麦汁も使用しているが、このオンリーファーストウォートだけは、一番麦汁を使用しピルスナーとして仕上げたビールにしている。

陸上に例えるなら、トラックを走る10000M競技がオンリーファーストウォートで、山を100マイル(160㎞)駆け抜けるウルトラトレイルのようなものがベアレンクラシック、といった感じだろうか。

(余計、ややこしいかも)

伝統的な製法で、一番麦汁だけを使用したピルスナー。

麦汁のうまみも活かしつつ、ホップのニュアンスを引き出すビールとして仕込んでいる。

後編は、使用しているホップについて語りたい。(続く)

クラシックについて語りたい【第一回】

世の中にある、「クラシック」と名のつく商品にはいったいどういう想いが込められているのか、たいした想像もしたことがないが、ベアレンの「クラシック」という名前に込められた想いをぜひ知って頂きたいと思い、ベアレン「クラシック」について、稚拙な表現ながら、語りたいと思う。

ベアレン醸造所の醸造設備をご存知の方も、そうでない方にも改めてお伝えしたいことの一つに、「100年以上前の醸造設備を使っている」ということがある。

おそらく日本で唯一無二の醸造設備、そしてそれを使いこなすための技術と経験を持ち合わせたマイスターがベアレン醸造所でビールを造っている。

(「マイスター(Meister)」はドイツの資格です。適当に使える肩書ではありません。「ブルワー」でも「職人」でもありません。)

そんな醸造設備を使って造るビール。

いったい何をスタンダードにするのか?

そもそも、私達ベアレン醸造所のビールは、1900年前半に情熱を注ぎ続けたビール職人達、醸造機器職人(金属加工職人)たちの延長線上に成り立っている。

1900年当時、ドイツでビール業界を牽引していた都市にドルトムントがある。

この都市では、輸出用にエキス分の高いラガービールを造っていた。

そして陸路(鉄道)、海路を通じて、その高品質なビールを発信し続けていたのが

濃厚なラガービール「ドルトムンダー」。

※参考までに2006年に私がドルトムントの醸造博物館で見てきた内容をご覧ください
http://baeren-sales.seesaa.net/category/7853299-1.html

かつて世界4大ラガービールと呼ばれた「ドルトムンダー」だが、今や当時の味わいを造りつづけている醸造所はあるのだろうか?

「クラシック」という名前。

これは直訳すれば「古典」という表現だが、芸術の世界では「名作」という意味合いで使用することが多い。

まさに、職人たちが造り続けてきたラガービールの名作を

100年前の醸造設備で再現する。それがベアレン「クラシック」と言える。

ベアレン醸造所が想いをこめて、創業当時からずっと造りつづけている「クラシック」を(私としては、少なくともクラシックだけは)飲んでもらえたら本当にうれしい。

そして、このブログのストーリーを語っていただけたらクラシックの味わいもまた少し違ったものになると思う。

ウルズスについて(その3)

ウルズスは私にとって、非常に思い出深いアイテムなので、連載でお送りしたい。

ウルズスのラベルについて
ウルズスといえば、冬のイメージ。ウィンタービールで売り出した、初期のウルズスは2点ラベル⇒1点ラベル、と変更、そのためラベルにも少し工夫を施した。冬限定、を連想するカラーは、やはり赤緑のクリスマスカラーではないだろうか。ベアレン醸造所で2アイテム目になる限定ビールにして初めて「赤」を取り入れたラベルと記憶している。そして、冬を連想させる雪をラベルの上に積もらせた。シマダの「ちょっと遊びが欲しいよね」という発想からだったのだが、実は「細かすぎる遊び」があったことに、いったい何人の人が気が付いただろうか。

まずは当時のラベルを見ていただきたい。

アーチの上に雪が積もっている。
これはウルズスのラベルにだけ、こういった「遊び」があったのだが、よく見ると、レンガにも積もっている。相当、デザイナーを困らせたと思うのだが、そこにも遊びを入れたい、という当時の想いがあった。(気づいた人がいたかどうかは別だが)

いま思うと、気づくか気づかないかの「10%のこだわり」が当時からはじまったと思う。ベアレンのラベルには、色々なエピソードがある。興味がある方は、工場にいらした際に、この扉を開いてほしい。(工場の2階にあります)答えは、この扉の中に書いている。工場に来たときの楽しみにしてもらえると嬉しい。